• 2021.04.06

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    kiki102_Archegos shock

    Archegos shock

     

    2012年にタイガー・アジア・ファンドで証券ディーラーから追放されたビル・ファン氏が率いる投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントが、米バイアコムCBS株に100億ドル超の巨大なポジションを積み上げましたが、今年3月22日のバイアコムの増資による株価急落が引き金となって多額の損失を被り、資金を提供していたクレディスイスが追証を求めましたが応じることができませんでした。

     

    アルケゴスからの資金回収を懸念したゴールドマンサックスやモルガンスタンレーなどの投資銀行や証券会社は、アルケゴスが投資していた巨額の株を強制的に売却したため、200億ドルを超える清算が行われ、さらに株価が下落したアルケゴスは債務超過に陥り債務不履行となりました。

     

    アルケゴスの自己資産は50億ドルから100億ドルとみられていますが、野村HDやクレディスイス等の複数の金融機関から金融商品のトータルリターンスワップと呼ばれる契約を通じて手持資金の10倍超の資金(1000億ドル?)を運用していた模様です。

     

     

    この契約は通常のレバレッジ取引とは異なり、参照資産(株式、ローン、債券等)の保有名義はアルケゴスではなく金融機関となり、金融機関に通常より高い金利(LIBOR+α)を払う代わりにその金融機関から調達した資金で投資運用(利益の享受)が可能になります。

     

    更にアルケゴスは、ファミリーオフィスと呼ばれるごく少数の顧客の資金を運用できる投資ファンドに属しており、登録や届け出、持ち高等の情報開示の点で通常のヘッジファンドに比べて規制が緩いことでこのような巨額の株式運用を構築できました。

     

    さらに貸手側の銀行も自己資本率等の規制強化やコロナ禍の金余りで融資先が限られる中、実際に証券を売買する場合ほど資本を割り当てしないで大きな利益につながる為、両者の目論見が合致したようです。

     

    この問題は世界の金融機関が許容レベルを超えたリスクテイクを蓄積している問題を露呈させました。まだ全貌は明らかになっておらず、第二第三のアルケゴスが現れるのかもしれません…..rangert1